2023.08.06 14:35- 2023年2月25日 - 青年の記憶/セーフルームの彼らオルタヴォルタ大学。学生の学びを深め、魔法使い達を管理する場所。管理、と言うと、やや語弊があるのも事実だが。ともかく、細かな事情を抜きにして語るとすれば、この大学はあくまで……人々にとって重要な役割を担う、僕の職場だ。職場と言っても単なる副業であるからして、ここを頻繁に訪れる事はないのだが、今日だけは事情が違った。おおよそ10年程度の付き...
2023.04.12 14:35- 2021年10月10日 - 少年の記憶/青い瞳の子どもたち「原初の魔法使いさんって、目が青いんだね」美術館の壁一面に飾られた絵を見て、ふとそんな感想がこぼれ落ちた。目前の大きな肖像画は、整った顔立ちの中でも、瞳がひときわ印象的に描かれているように思う。その目にじっと見下ろされているうちに、思わず、絵画と睨めっこをしているような、不思議な感覚に陥った。隣に立つコル君が、クレイと同じ色だね、と言って...
2023.03.31 14:35- 2021年8月16日 - 少年の記憶/逃げ出すための足先「えっ、クレイ君!?」真っ白な髪が横切りかけて、慌てたように振り向いた。彼にとっては最寄駅らしいこの場所で、ぼくを見つけた水色の目が困惑したように見開かれる。夏休みも終盤とは言え、まだまだ照りつける陽は眩しく暑苦しい。そんな中、過保護な母を連れずに1人きりで座っていたのだから、驚くのも無理は無いと思う。「なんでこんな所に、1人で……? そ...
2022.10.28 14:35- 2021年6月10日 - 少年の記憶放課後になると、みんなが楽しそうに教室を抜け出していく。勿論、自分の席に留まる子も少なくはないけれど、その表情はどれも笑顔ばかりだ。公園で集合な、とか、これから習い事だ、なんて話し声が聞こえて来る陽だまりの中。とりとめもない会話の群れに寄り添ったまま泳いでいたくて、ぼくは椅子から立ち上がれずにいた。1番前の、窓際の席。最前列は不人気だけれ...